<IMGA世界ジュニアゴルフ選手権>
15-18歳の部女子で、大林奈央(兵庫・相生学院高3年)が逆転で「世界一」に輝いた。最終ラウンドで、1位サソウ(フィリピン)に3打差2位で出た大林は、前半で2打縮めた後、10番でバーディーを奪い、ボギーとしたサソウを逆転。11番でも連続バーディーを奪って突き放し、この日ボギーなしの6アンダー66、通算14アンダー274で初出場優勝を飾った。昨年まで畑岡奈紗が2連覇しており、この部門で日本勢が3連覇を果たした。平岡瑠依(大阪・大阪学芸高3年)が3位、河野杏奈(千葉・麗澤高3年)が5位と日本勢が上位を占めた。同男子は河本力(愛媛・松山聖陵高3年)が最終ラウンドで爆発、5バーディー、ボギーなしのこの日のベストスコア67で回り、通算1オーバーで6位に食い込んだ。団体戦は男子の河本、中島啓太(東京・代々木高2年)組が3位、団体2連覇中の女子は平岡、吉田優利(千葉・麗澤高2年)組が台湾に2打差2位だった。
【PGM日本代表最終成績】
▽15―18歳の部男子(パー72)
【1位】ペリコ(ペルー)=280
【6位】河本力(愛媛・松山聖陵高3年)=289
【44位】中島啓太(東京・代々木高2年)=299
【51位】中澤大樹(兵庫・滝川第二高2年)=304
▽15-18歳の部女子(パー72)
【1位】大林奈央(兵庫・相生学院高3年)=274
【3位】平岡瑠依(大阪・大阪学芸高3年)=280
【5位】河野杏奈(千葉・麗澤高3年)=283
【21位】吉田優利(千葉・麗澤高2年)=291
(協会広報ライター・赤坂厚)
雑観
15―18歳の部女子で大林奈央(兵庫・相生学院高3年)が、冷静に、鮮やかに、逆転劇を演じた。3打差でサソウ(フィリピン)を追いかけ、前半で1打差に詰め寄った後、10番でバーディーを奪って、ボギーにしたサソウを逆転。畑岡奈紗の連覇に続く日本勢3連覇を達成した。15-18歳の部の日本選手団全員が待つ18番グリーン。いつものように、ひょうひょうと、表情を変えずに「世界一」のホールアウトをした大林に、チームメートは用意したペットボトルの水を一斉にかけて祝福した。「うれしいんですけど…優勝なんて全く(頭に)なかったので、ただただびっくりしてしまって」が、優勝者の第一声。笑顔ものぞくが、どことなくひきつった表情なのは、言葉通り、予期せぬ出来事だったのかもしれない。
とにかくこの日はパットが入りまくった。1打差に迫った9番。サソウは2・5メートルのバーディーチャンスにつけたが、大林は5メートルのパーパットを残した。このパットをあっさりと決め、サソウが外して差が開かなかったのが、後半の逆転劇につながった。
「最近の試合で、トップとかに立っても最終日のバック9で失敗してばかりいたんで、不安というか、回るのが怖かった」という。10番、8メートルのバーディーパットを決める。バンカーショットをミスしたサソウは1・5メートルのパーパットが残していたが、大林の後に打って外す。大林12アンダー、サソウ11アンダー。1ホールでひっくり返した。続く11番では2・5メートルを決めて連続バーディーで突き放す。
「きょうはあそこが一番でした」というのが、豪快な打ち下ろしの名物ホール15番パー3。風に流されて左の土手を転がり落ちた。「ラフが深くて」とアプローチを打ち過ぎてピンを10メートルオーバーした。「焦ったらあかんと思いました。2打差あったんで」と気持ちを冷静に保って打ったパーパットが決まってパーセーブ。大事なロングパットが次々と決まり「今日はパットが来ている日だと思いました」と、自分でも「予感」があった。
「米国に来たのも、米国でゴルフをするのも、世界ジュニアに出るのも、全部初づくし。コースがあっていたんだと思います。何より、グリーンがあっていた。4日間で3パットが1回もなかった」と振り返った。ドライバー飛距離240~250ヤードと飛ぶ方ではない。目指しているのは「無駄のないゴルフ」。フェアウエーに置くことを最大のポイントにし、コースマネジメントをしっかりとする。距離は短いが、グリーンを含めて全体にアンジュレーションのあるコースを、巧みに落としどころを考えて攻めていった。「今までで一番無駄のないゴルフをできました。簡単なコースではなかったので、攻略するのが面白かった」と笑った。
通信制高校の3年生。進路を聞くと「正直、プロで活躍するというのではなく、プロを支える方に興味があります」という。日本代表になり、代表合宿に参加した時に、日本選手団団長の井上透・国際ジュニアゴルフ協会代表理事の講習を聞き「測定の分析とか、日本と米国のスイング違いとか、そうした話を聞いて、自分はこういうことがやりたいんじゃないかと思いました」という。ただ「最前線を知らないと支える側になれないと思う。その近道がプロだと思います」と、プロ入り志望も、将来を見据えたステップととらえている。
大きな大会での優勝は初めて。井上団長は「畑岡奈紗が初優勝した時のような感じがした。新しいタイプの選手が出てきた。とにかく、マネージメントがしっかりしている」と評価した。
「どうせ優勝なんて無理やから、とりあえずスタートの7位から5位ぐらいを目指そうと。試合のベストが5アンダーだったんで、6アンダーにいたときは狙いましたが残念。毎日順位を上げられてうれしかった」と第1ラウンド10位からトップ3まで上げた。昨年2位のラ・コスタ・リゾートと違うコースでも力を見せ「グリーンが広くて固かったけど、ショットが良かった。スコアが出るコースだとは思いました。そういうコースでバーディーを取れるようにしていきたい」と今後への意欲も見せていた。
15―18歳の部男子の河本力(愛媛・松山聖陵高3年)が、最終ラウンドで持ち味を発揮した。「距離があって、風があって、グリーンが難しくて、大変なコース」といい、第3ラウンドまで6オーバー27位と苦戦。この日は「ドライバーがよかった。距離は誰にも負けていなかった」と、ようやく300ヤード超の長打力を披露。6,9番、11番で3メートルにつけてバーディー。13番で2メートルを入れ、14番では「右に曲がって、セカンドが木越えの153ヤード。フライヤーを計算してピッチングウエッジで打った」のが5メートルに乗り、5つ目のバーディー。最終18番パー5では2オンを狙ったがグリーン手前の池に入れた。それでも第4打を寄せてパーに収め、ボギーなしこの日のベストスコア67をマークした。
順位も一気に浮上して6位に食い込んだ。「最終日だけ楽しかった」と遅い爆発を悔やんだ。姉の結(日体大1年)が個人資格で出場しており、5位に入って、表彰式ではきょうだいでトロフィーを手にした。「ティーショットの精度とセカンドの距離感が必要。あとは気持ちの整理かな」と、難コースでのプレーで今後への課題を見つけていた。
コメント
☆15―18歳の部男子44位の中島啓太(東京・代々木高2年)
「前週にあった日本アマでよい結果を出して(2位)よい流れで出られるように準備してきた。調子は悪くなかったが、スコアにならなかったのが悔しいです。もっとパワーが必要なコースだと思いました。国際大会の雰囲気には慣れてきましたが、まだ100ヤード以内のコントロールが足りません。丁寧すぎてしまうと世界で通用しないのが分かったので、プレースタイルを変えたい」
☆15-18歳の部男子51位の中澤大樹(兵庫・滝川第二高2年)
「何回かもったいないボギーがあったが、その分何回かいいバーディーが取れてこの結果になりました。最終日(84)は詰めの甘さが出た。自然の地形を生かした素晴らしいコースでした。最終日以外はアイアンのコントロール、アプローチがうまくいった。ドライバーの安定感と、ショット全般の球筋のコントロールが課題だと思います」
☆15-18歳の部男子で予選落ちした植木祥多(埼玉・埼玉栄高3年)
「予選落ちという一番ダメな結果になった。アプローチはよかったけど、グリーンがとても難しかった。どんなグリーンでもしっかり打てるようになりたい」
☆15-18歳の部女子5位の河野杏奈(千葉・麗澤高3年)
「3日目までアンダーで回れていたが、最終日に安定しなくなってオーバーパー(74)を打ったのは悔しい。トーリーパインズは自分の飛距離を生かせるコースだったので、回っていてとても楽しかった。飛距離は世界大会でも通用すると思う。問題はショット自体の安定性。高めていかないといけないと思います」
☆15-18歳の部女子21位の吉田優利(千葉・麗澤高2年)
「ショートアイアンが苦手なので練習してきましたが、ふがいない結果になって悲しいです。調子が悪かったでは収まらない。ずっとパットが悪いと思っていたんですがいい方でした。実はショットがうまくなかったことに気づきました。もっと寄せろよ、ということです。ショットの精度、ロングゲームを練習します」
☆15-18歳の部女子で予選落ちした小野里リア(熊本・クリスチャン・アカデミー・イン・ジャパン高熊本分校2年)
「結果にはすごくがっかりしました。もう少しできたと思っています。メンタル面が弱かった。特に初日につまずいた(79)のが悲しいです。コースはとても面白かったけど、レイアウトが難しくて、グリーンも固くてラインが読みづらかった。ショットの安定度は世界でも戦えると思いました。もう少しメンタルを強くし、自分のプレーにもっと自信を持ちたい」
☆15-18歳の部女子で予選落ちした西郷真央(千葉・麗澤高1年)
「悔しい気持ちがとても大きい。昨年のコース(13-14歳の部、CCランチョ・ベルナルド)よりも難しく、広いけどコースマネージメントが必要とされるコースでした。セカンドショットは切れていたので、これからも今の調子で行きたいです。表面的な良し悪しだけではなく、ダメな原因を1つ1つ確認して練習していきたい」